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――父さんには前例がある。
二人の兄さんたちの時も、「俺はいいよ」なんて言って逃げたらしい。
その一番上の兄さんが会社を経営している。
二番目の兄さんが営業部長。
三男である俺は――製造業とは畑違いのエンジニア職に就いている。
今となってはこれで良かったと思っているけど、当時は意地もあった。
幼少の頃から兄さんたちと同じチームで野球をしていたのに、俺だけサッカーに転向した理由と同じ。
様々な理由があったけど、その最たるものは兄さんたちと比べられることが嫌だったから。野球だって自分でやりたくて始めたんじゃない。物心ついた頃から兄さんたちに付き添って行っていた。ただそれだけだった。
もっと自分らしいことがしたかった。
俺は――「兄さんたちの弟」としての俺じゃなく、「瞬」としての俺を見つけたかった。
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