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だけど正直、そこまでサッカーがやりたかったわけじゃない。野球じゃなければ何でも良かったんだ。同じクラスのショウタにちょうどサッカーに誘われたってだけで。
でも自分らしさを探したいという強い気持ちが伝わったのだろう。父さんは「そうか」と言っただけで、また新聞を広げた。
始めた理由はアレだが、「やると決めたらやってやる!」と、心に火がついた。
それからサッカー中心の生活を送ったし、強豪高校に推薦で行った。
しかし上手いやつはいくらでもいる。
部員の多いサッカー部でレギュラーにすらなれないやつがプロを目指せるほど、世の中は甘くできていない。
それでも父さんと交した約束がいつも心のどこかにあって、俺を振るい立ててくれていた。
「自分に負けたくない」と。
――だが一つだけ、心に引っかかっている。
サッカーの許しを得た日から、父さんとキャッチボールをしなくなったことだ。
それまでは父さんの方から「やるか!」と、声を掛けてくれていたのに。父さんが兄さんたちとキャッチボールをしているのを横目に、俺はサッカーの練習へ行っていた。
父さんに見放されたんだと思った。
きっかけを作ったのは俺だけど。
それが父さんの会社に入らないと決めた理由の一つでもあった。
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