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コーヒーゼリーの誘惑
「圭介、奥の部屋に小さな金庫があるんだけど、取ってきてくれる?」
圭介に汚れた心を見せたくなくて、わざと用事を頼み、二人きりにした私は朋恵の様子を窺うことにした。
テーブルの上にはお茶とコーヒーゼリーを用意しておいた。コーヒーゼリーは、以前私が手作りして、圭介が美味しいと言ってくれたものだった。
「私たちって、コーヒーゼリーみたいよね。私と圭介は黒いゼリーで、きっと朋恵さんは白いミルクね」
朋恵の動揺した姿を見たくて、私はゼリーの中へスプーンを突き刺し、粗雑に言葉をけしかけた。
「ほら、小さな隙間を見つけて、その隙間が入ったところから、真っ白なミルクが躊躇うことなくじわじわと潜り込んで、より深く、より奥へと侵入していくわ」
ピクリと朋恵の眉が動く。視線は私の手に持つコーヒーゼリーに注がれている。その行方を気にするように、小さく眉を片方だけ上げた。
「私、甘いものは苦手なのよ。だからね、シロップの入った甘いミルクは、大嫌いなの」
顔色ひとつ変えず、朋恵は無表情のまま私の方へと向きを直した。
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