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私はしばらく考えて申し訳なさそうに「はい」と言った。
この京都馨月亭には、旅館としての建物が四棟ある。
私は入社した時からフリージア一筋で、他の棟には全く興味がなかった。
でも、それでも知らない私の方がおかしいのかもしれない。
こんなイケメン君が同じ敷地で働いていたのだから。
「とりあえず三か月はここフリージアで働くので、どうぞ仲良くしてください。
あ、それと、さっき、慈恩に会いに行きますとか言ってなかった?」
慈恩?? え、愛しの慈恩さまの事?
「あ、はい…」
唱馬の表情が乾いた空っ風のように険しくなる。
さっきの爽やかな風はピタリと止んでしまった。
「何か言われた?」
「いや、あ、その大丈夫です…
全然、優しくて、今回は大目に見てくれるって」
侍風髪型だったから助かりましたなんて、口が裂けても言えない。
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