慈恩の艶めく本能

15/25
前へ
/182ページ
次へ
さくらを何があっても手離さない。 何度も何度も、俺は心にそう誓った。 そして、俺自身も初めての味わう最高の瞬間に身も心も尽き果てる。 生きているうちに、天国へやって来たみたいに。 「専務… 今日は、お仕事は?」 俺達はちゃんとキングサイズのベッドの上で寝ている。 昨夜、いや、早朝に、俺達は何度も身体を重ね合わせて、その都度、尽き果てた。 昂る感情と身体的な疲労が重なって、俺もさくらもぐっすりと眠っていた。 いや、待てよ… 俺はシーツの中からゆっくりと顔を出した。 「今、何時?」 「七時半です」 俺はそっと胸を撫でおろす。 今日は、朝の十一時から、大切な会議が入っていた。 七時半なら、まだ余裕で間に合う。 隣でジッと俺の顔を眺めているさくらを、当たり前のように強く抱きしめた。 「大丈夫、余裕で間に合うよ。 起こしてくれてありがとう」 さくらは泣きそうな顔をしている。 俺はその表情を見て、やっとさくらの心情を察する事ができた。
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

124人が本棚に入れています
本棚に追加