慈恩の艶めく本能

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「唱馬の事は、俺がちゃんと話をするから。 だから、さくらは、今日からこの家に帰ってきてほしい。 しばらくは、寮には帰らないで。 そうしなきゃ、俺達は前へは進めないし、唱馬のためにもそうしたい」 「で、でも…」 さくらは戸惑いを隠せない。 自分のやっている事は最低な事だと、自分自身を責めている。 切なくて、苦しくて、自分を許せなくて… さくらの覇気のない瞳から、そんな感情が読み取れた。 「さくらは俺に一目ぼれをした。 唱馬じゃなく、俺に… それは揺るぎない真実で、さくらの正直な気持ちなんだ。 唱馬はちゃんと分かってる。 さくらが愛しているのは、自分じゃなく慈恩だって事を。 だから、俺達も芯を通す。 グラグラ揺れる事が、一番、唱馬を傷つけるんだ。 だから、さくらは俺だけを見つめて。 唱馬との問題は、俺がちゃんと解決するからさ」 さくらの心が疲弊してしまう前に、唱馬の件を片付けなきゃならない。 さくらの初めての恋愛が親戚同士の取り合いだなんて、それはあまりにもヘビー過ぎる。
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