124人が本棚に入れています
本棚に追加
/182ページ
孤独の日々には子供の頃から慣れていた。
母がいて父がいて、そして大好きな祖母がいて、京都の実家で暮らしていた幼い頃の温もりに溢れた記憶が、こんなところで蘇ってくる。
この時点で、俺はもう仕事の事は忘れていた。
さくらとこのままベッドに戻りたい。
俺の中の理性はどこかに吹っ飛び、今の俺は本能でしか動けないただの動物だ。
でも、さくらは俺の腕の中から、上手にするりと抜け出した。
「専務、早くシャワーを浴びて準備をしてください」
「じゃ、さくらも一緒にお風呂に入ろう。
久しぶりにお湯を溜めて、ね」
さくらは俺の言う事をひたすら無視して、俺の背中を押してシャワールームまで連れて行く。
「私は、今日は、自分の家に戻って荷物を取ってきます。
そして、専務の家で夕食を作って専務の帰りを待ってますから、ちゃんと仕事を済ませてきてください」
俺はそのさくらの決心が嬉しくて、またさくらを抱きしめようとした。
でも、さくらはまたするりと俺のハグから逃れる。
最初のコメントを投稿しよう!