慈恩の艶めく本能

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「専務、唱馬さんが見えてますが」 十一時からの会議が終わり、俺は溜まっている書類の山を整理していた。 このITの時代に、馨月亭グループは紙の書類が多過ぎる。 自分の会社の事だけど、いい加減うんざりする。 こういうところから改革を始めなければならないが、中々、そう簡単にはいきそうにない。 改革を推し進めるためには、信頼と実績と真面目さが必要となる。 まだまだそういう器じゃない俺は、今だって、努力を怠ってはならない。 どんなにさくらに骨抜きにされても… でも、逆の角度から考えれば、落ち着いて仕事に集中するために、今の問題、そう唱馬とさくらの問題を早急に片付けなければならない。 そんな中、唱馬はこちらから呼び出したわけでもないのに自ら訪ねて来てくれた。 俺は秘書に目配せをして、通すように指示をした。 唱馬は、開いているドアをわざとらしくコンコンと叩いた。 俺の全ての意識を自分に向けさせるように。
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