慈恩にキュンです

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「今日からこのフリージアに馨月亭グループの次期社長がリニューアル案件でしばらく居座るみたいなの。 この間までどっかの国で遊んでたお坊ちゃまよ。 今朝から出勤してるからとりあえず自己紹介しておいて。 もう、他の皆は終わってるから」 「…はい、遅くなってすみません」 「彼の認識は遅刻しているスタッフが一人いるって感じだから。 どういう態度でくるか分かんない。頑張ってね」 「…あ、はい」 私は一瞬で血の気が引いた。 そういえば、そういう噂が流れていた。ここの御曹司が帰ってくるらしいと。 いや、いや、でも、普通は本館で仕事でしょ? この旅館のオフィスは本館と隣の別館に構えていて、このフリージアは忘れられている存在だ。 あ、でも、古くて忘れられている洋館だからリニューアル案件? 私は小走りで歩きながら完全に頭がパニックになっていた。 遅刻した私が悪いんだけど、あ~、このままどこかへ逃げてしまいたい…
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