理想を、1枚ずつ

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理想を、1枚ずつ

ー戦創世記93年ー 今から約13年前 12歳の俺が住んでいたのはグリーフ王国の先端の町、『フレンドツリー』。 基本的には貧しい奴か、戦場で拾われてきた難民しか住んでいない。 住民の優先度は低く、役割といえば中心街へ輸送するための農作と、外国から攻撃された時に真っ先にクッションになることだ。 碌な環境じゃなかった筈だが、特に不満はなかった。 物心ついた時に両親は戦争に巻き込まれて死んでたし、早い段階で1人で生きてきた。 同じような境遇の奴らもいくらでもいて、特別自分が不幸だとも思ったことはない。 ただ違うのは他の奴らは"今に不満"を持ってたってことだ。 何かしら野望を持っていて、それを叶えようと必死だった。 歳上の奴が軍人になったりしたが、聞くところによると大概初陣で死んでるらしい。 足掻くだけ無駄だ。 世の中はなるようにしかならない。 求めるから苦しいんだ。 そんな事も分からない奴らが俺に欲を持てと強要する。 鬱陶しい限りだ。 そんな折、新しい戦争孤児がこの町に来た。 俺はそいつが気に入った。 理由は簡単 歳が同じということと、そいつが俺と同じ、虚無の目をしてたからだ。 名前は、"レオン"って言うらしい。
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