理想を、1枚ずつ

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ー新戦創世記三年ー 〜旧王都ソレイユ〜 連合軍が強襲により、真インセンス帝国からソレイユを奪還した、その夜。 カフィは座りながらゆらゆらと靡く焚き火を見つめていた。 「どうした?感傷に浸ってるのか?」 副隊長のレオンがテントから出て歩み寄った。 「…いよいよ始まっちまったな」 「…ああ」 「なぁレオン、お前いつか俺に言ったよな?」 「ん?」 「人間は決して"今には満足出来ない"、その"都度"理想を追い求めていきゃ良いって」 「言ったかもな」 「何となく分かってきた気がする。レオン、俺はこの戦争を終わらせてぇよ」 「ああ、俺もさ」 「もし勝って落ち着いてきたらよ、2人で旅でも出ねぇか?」 「その発言は意外だったな…どうしたんだ急に?」 レオンは少し驚いた様子で聞いた。 「昔を思い出してな、何もかも諦めてた当時の自分が心底つまらねぇ奴だと思ったんだよ」 それを聞いたレオンはふっと笑う。 「なるほどな。確かにお前は変わったよ。他人を想って説教するようにもなったくらいだしな」 「だろ?きっかけをくれたのはお前だ。だから俺はお前といつか腹の底から笑い合いてぇんだ。本のページみたいに1枚ずつ、理想を捲っていってよ…!」 「よせよ気持ち悪い。…でも面白いな。自分たちのためだけに時間を使える、そんな時代を求めてか…」 「…勝とうぜ、何が何でも」 「…ああ」 ーーーーーーーー 拘りなんてものはない 俺は誰のために生きてる訳でもないし 今後誰かのために生きることもないだろう 特に拘りはない だが生き物は皆すべからく何かを求めている それを消すなんて不可能だ 求めないことに意味なんてない ただ必ずしも強欲である必要もない 見つめていこうぜ 少し先の未来だけーーー 〜理想を、1枚ずつ〜 -完-
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