11人が本棚に入れています
本棚に追加
半日ぶりの強い日差しで目が眩んだデイビッドは、空の歪みを観測した。輸送機がステレス機能を解除し、青い空に銀色の輪郭があらわれた。その鋭角のフォルムは大自然に仇なすように、砂漠の風景に影を落とした。
「わたしはこの時を待っていた……」
デイビッドは歩いた。一歩一歩が砂に沈み、それさえももどかしく感じた。義体は眠るように倒れ、彼は一瞬にして機体に移動した。久方ぶりの意識転送による頭痛も、彼にとっては快楽に近かった。
輸送機内部に備えつけられた義体は、懐かしむように窓ガラスに手を当てた。砂漠はどこまでもつづき、彼は自分がそこを歩いていたことをひどく滑稽に感じた。
機体が大気圏を突破すると、とたんにGは緩み、まるで安らかな森の中にいるように感じられた。亜高速移動がはじまったのだ。
背景はあっという間にはるか遠方へと消え去り、地球の青さに感動する余裕など皆無だった。
最初のコメントを投稿しよう!