【AC2115-1-28 「チンパンジーは何を思う」より抜粋】

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【AC2115-1-28 「チンパンジーは何を思う」より抜粋】

 世界各地に生息するチンパンジーのメスが、一斉に胸の肥大化をはじめた。  不思議なことに、野生のチンパンジーだけでなく、動物園で飼育されていたチンパンジーも示し合わせたようにその変化にしたがった。  もはや偶然とはいいがたい状況に、世界各国の専門家は頭を抱えた。当初の見解であった、環境変化にともなう女性ホルモンの増加という説は、地球上すべてのチンパンジーの胸が頭部ほどの大きさになったことで説得力をなくした。  ある専門家はこういった。 「メスの尻にはオスを誘惑する作用があった。しかし我々が二足歩行をはじめると、オスの目の前から尻がなくなった。だからメスは胸を肥大化させ、第二の尻とした。だが今回のチンパンジーの変化は、その順序が逆になっている。胸が肥大化するのは二足歩行に移行してからだ。もしかしたら、彼らは我々人類を参考にして、進化をはじめようとしているのかもしれない」  しかし、胸の肥大化は一時的な世代のみにとどまり、チンパンジーのメスは通常の形態に戻った。それ以降、チンパンジーに変化が見られることはなくなった。
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