きっと、なにか

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 過ぎゆく町並みは新鮮なはずなのに、全く心が動かされない。  迫るおわりのときをただ迎えいれることがいまの私には大事で、もう他のことはどうでもいい。  いつしかトラックはセピア色の町を離れ、木々の枝葉が重くたれる場所にやってきた。  やすらかに眠るには静かでいい場所だと最初は思った。けど、かん高い鳴き声があがり、次々にさまざまな獣の愉快な声が交差しだしている。  にぎやかすぎてゆっくり眠れなさそうだ。  そう苦笑すると、トラックは止まり私たちは人間に抱きあげられた。 「ゾウさんたちお待たせ!」  私の体に衝撃が、繊維の奥まで走った。  灰色の巨大生物が現れたのだ。なめらかな岩のような胴体が木の幹ほどある四本足に支えられていて、顔の両目の間からは太く長い(くだ)が伸びている。  と人間に呼ばれた生物は私たちを見ると、つぶらな瞳を輝かせ、管の先を高々とかかげた。 「わーい。新鮮な青草だ」  うれしそうに鳴くゾウさん。  管が私たちをゆっくりと巻き取りあげる。  私はさとった。ゾウさんは私たちを待っていた。雑草はゾウさんに必要とされている。  心安らいだそのとき、私は口に放りこまれた。 ……………… ……… …  ……ああ。風よ伝えておくれ。私を――雑草をゾウさんが待っていたと。雑草はゾウさんの役に立つと。  そして、ゾウさんの一部になって生きていると。
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