きっと、なにか

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「ねえ、ママ。なにが起こっているの」  根っこでつながる小さい坊やが聞いてきた。  ……ああ。私の母が連れていかれたときと同じだ。だから、母と同じように私もまた子に伝えなければならない。残酷な現実について。 「もうすぐ私は連れていかれるわ。けど、これはさだめなの。私たち雑草は大きくなったらここから去らないといけないのよ」 「なんで?」  やわらかい風が吹き、小さくもまっすぐ伸びている坊やの葉が揺れた。 「私たちはそういう運命だと決まっているの。私の母も祖母も曾祖母も……ずっとずうっと昔から、ただ刈られるのを待つばかりの運命だったの。そして」  私はつまった。この先を言いたくない。  けど、轟音はすぐそこまで近づいてきている。もたついている暇はない。 「……そして、焼かれるのよ。風の便りに曾祖母がそう聞いたって。私たちは必要ない、むしろ自然を壊すって」 「なんで? ボクたちだって自然でしょ。あそこにいる桜の木といっしよの自然でしょ」 「これが私たちの運命なの。坊や、あなたにも必ず訪れるものなのよ。覚悟をしときなさい」  鋭い破壊音が数本先で響きだした瞬間、私は地から離れた。風に一瞬だけ浮くと、倒れた仲間の上に折り重なった。
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