1人が本棚に入れています
本棚に追加
……空が美しい。
私の魂はまだ草に宿ったままで、ときとともに移ろう空を眺め感動することができている。
この草が青いうちか灰になって散るまでは生きていられるらしい。
土手の大きい仲間たちが一掃されるころには、空は紺や紫や橙に染まり、その下をトンボがせわしなく飛び交いだしていた。
……このトンボや空も雨みたいに存在意義があるのだろうか。もしや、美しいと感動させるためにあるのだろうか。ならば、私も存在するだけでなにかの役に立っていたのだろうか。きっと、なにか。
「大量だな。みんな喜ぶといいな」
人間が私を持ちあげて、満面の笑みになった。
……ああ。私たちがいなくなることで喜ぶものがいるなら、それはそれでいいかもしれない。
もう雨がうらやましいなんて思わない。
私の体は仲間とともにトラックの荷台に乗せられ、揺られだした。
いよいよさいごの地へゆくのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!