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2話 最悪なスキル
「君、前の人生の最期に呪いを掛けられてるよ。それもかなり強力なやつ。これが邪魔して攻撃系のスキルが入らないんだ」
「え?まさか…」
最期に見たあいつの顔を思い出す。
「けど、あいつ普通の男だった筈だ…なのに、呪いなんて、なんでそんな事が…」
俺が愕然として呟くと、管理神がそれに答える。
「普通の人間でも、念が強ければそういう事も出来るんだよ。特に呪術系の家系だったりすると、自分で知らない内にやってのけたりする事もあるんだ。でもこれ、割と簡単に解けそうだな」
「ど、どうやったら解けるんだ?」
呪いなんて得体の知れないものが、自分に掛かっていると思うと無性に気持ち悪くて、警戒すべき相手だというのに、思わず俺は素で聞いてしまっていた。
「ちょっと待って、今よく『読んで』るから…うんうん、へぇ~なるほどぉ」
管理神は俺に分からない事を呟きながら、しまいにはくすくす笑い出した。
「うふふっ、こんな事してたのかぁ、そりゃこんな呪い掛けられるよねぇ」
「おい、自分だけで完結するな!ちゃんと説明しろ!」
イライラして言うと、管理神はやっと俺を見た。
「あはは、ごめんねえ、面白くてさ。ねえ、君って前の人生で女の子を食い散らかして、男に相当恨み買ってたんだね」
「……」
それは本当だ。俺はクズでクソで最低なホストだった。仕事で女を食い物にする事はもちろん、私生活でも最低な事をたくさんやって来た。半分、女に復讐してるようなものだって自分でも分かっていたけど、やめられなかった。
――――というか、やめる気が無かった。
その事で男とも数えきれないくらいトラブルを引き起こして来たし、結局それで刺されて死んだ。ある意味、望み通りに。
「呪いを解きたいなら、君はこの先二度と女の子を抱いちゃいけない。絶対にだよ?あんなに女の子食い散らかしてた君には死ぬより辛い事かもしれないけど、これで呪いは解けるよ。簡単で良かったね」
「―――……」
俺は黙り込んだ。
こいつは俺が好き好んで『そういう事』をして来たと思ってるらしいが、本当は違う。
俺は、今まで一度だって女を心から抱きたいと思った事なんか無かった。
ただ、征服欲を満たす為、目的を達成する手段の為に、自分を殺して抱いていただけだ。
俺を知ってる奴らは、誰もそんな事信じないだろうが。
だからもう女を抱けないと言われても、実の所そんなダメージはなかった。
そんな事でいいなら、とむしろほっとした位だ。
だが、話はここで終わらなかった。
「うーん。でも攻撃スキルが付与できるまで、君の呪いが解けるのを待ってる時間はないんだよねえ。攻撃系じゃないスキルで何とか出来るスキル…あ!そうだ!」
ぶつぶつと考えに沈んでいた管理神が、急に顔を上げて俺を見る。
物凄く嫌な予感がした。
「ふふ…一つ、物凄くいいスキルがあったよ。このスキルを使えば君の呪いも解ける上に、他の転移者達よりも強くなるかもしれない、すんばらしい~~スキルだよ!聞きたい?聞きたい?」
ニヤニヤと言われたが、
「聞きたくない…」
思わず呟くように答えた。絶対俺にとって最悪なスキルだ。そういう予感がする。
「まあそう言わずに聞きなよ!そのスキルはね、そのまま『スキルコピー』って名前なんだ。なんと、他者の持ってるスキルを自分のモノに出来るんだよ。凄いでしょ?一番強いスキルを持ってる人からコピーさせて貰えば、君もすぐ強くなれる。半分ズルみたいなスキルだよね」
「……」
話だけ聞いていればいいスキルのように思える。だけど、こいつがこんな風にニヤ付いているからには、何か裏があるに違いない。
警戒しながら管理神のニヤけた顔を見返したが、次の言葉でやっぱり地獄に落とされた。
「ただし。スキルをコピーする為には、その人とセックスしなきゃいけないんだ。しかも生で中に出して貰わなきゃいけない。本来女の子専用スキルだったんだよ。だからセックスの相手は男限定」
「は…!?な…!??」
あまりの衝撃に力が抜けてしゃがみ込んだ。
生で中出し!?あ、あああああ!!クソ!最悪!最悪!!最悪だ!!!
死ねずにこんなヤツに囚われて面倒ごとを押し付けられてるだけじゃなく、呪いまで掛けられてて…しかもその呪いのせいで男に抱かれろなんて、最悪なスキルを押し付けられそうになってるだなんて、本当にどんな悪夢なんだ!?
冗談じゃない。どうして俺がケツに…男のアレを突っ込まれなきゃいけないんだ!
「おい!他に何かないのかよ!?攻撃スキルが無くても何とかなるんじゃないのか?」
「なるわけないでしょ。攻撃スキルなしでどうにかなるほど魔王が弱いなら、今頃とっくに僕の世界の誰かが魔王を倒してるってば。君は魔王の強さを分かってないから、そんな事言えるんだ」
呆れた顔で言われるが、そんなの知った事じゃない。
クソ、分かってるよ、俺の生前の素行が悪かったから自業自得だなんて事は。
けどどうして死んでまで、こんな目に遭わなきゃいけないんだ。俺だって、好きであんな生き方してた訳じゃないのに…
怒り、憎しみ、後悔、悔しさ、纏まらない思考と感情が俺の中をぐるぐるした。
そんな風に混乱している俺にお構いなく、管理神は上機嫌で言った。
「君、すごく綺麗で可愛い顔してるし、きっと男にもモテるよ。艶やかな黒髪と黒目で、僕の世界には珍しい色合いだしさー。良かったね!これで魔王倒せちゃうねー!」
「い、嫌だ…何も良い事なんかない…!」
しゃがみ込んだまま悶える俺にお構いなく、管理神はうきうきとスキルを俺に付与して来た。
光の玉が俺の体に入って来る。
「ん。ちゃんと入ったね!って事は君は淫乱の素質があるって事だよ。良かったね!これなら誰とでもセックスを楽しめるねー!」
「い、いいいい淫乱!?」
聞き捨てならない事を言われ、ぎょっとした俺が顔を上げると管理神はにこにこと頷いた。
「だってさっき言ったでしょ。基本スキル以外は、君と相性のいい物しか付与できないって。付与できたっていう事は、そう言う事だよ」
「そ、そ、そんな、馬鹿な…」
俺が盛大に狼狽えているのに構わず、管理神はもう用は終わったとばかり言い放った。
「じゃこれでOKだ!防御系スキルは全部付与できたから、僕の世界に君を傷つけられる人はいないよ。これで他の転移者とセックスして攻撃スキルをコピーさせて貰えば、あっという間に魔王倒せちゃう。そしたら君は晴れて自由だ!じゃあ服はこっちでサービスしとくし、この世界のお金は無限収納に入れてあるから、頑張って来てね!じゃあねー!」
そしていきなり、問答無用で足元に穴が開いて、俺は落とされた。
「え、ちょ、待て!?」
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