僕の幸

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「ユキ、おいで」  そういうとユキは嬉しそうに尻尾を振りながら寄ってきて、広げたハーネスに器用に頭を入れる。 「えらいえらい」  頭を撫でてやると嬉しそうに目を細めた。子犬の頃は薄黄色だった毛は、成犬になった今では黄金色になっている。 「雨が止んでるから今のうちに散歩に行こう。いつものルートは地面がぬかるんでて危ないから、今日は別のルートな」  分かっているのかいないのか、濡れた鼻をピクピク動かしながらキューンと小さく鳴いて返事をしてくれる。  この子を迎え入れて五年。なかなかのお転婆娘なので大変なこともあるが、それ以上に楽しくて飽きることのない日々を過ごせている。それもあってか、未だに彼女はいない。  だけど、ユキと見る桜は綺麗だし、海岸の散歩は楽しいし、遠出した先で一緒に食べるお弁当は美味しい、寒空の下で白い息を吐きながら歩く姿には気高さを感じる。ユキのお陰で、昔よりも一日一日を大切に過ごせているのだ。  今更ながら「犬を飼って可愛い彼女をつくる」なんて考えは、犬にも女性にも失礼で軽薄だったと思う。でも、こんな幸せな毎日が待っていたのなら、その軽さに感謝しなければならないだろう。 「さあ、行こうか」  ワンッと元気よくユキが応えた。
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