ぷろろーぐ

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ぷろろーぐ

 ――この世とあの世の境目はどこにあるのだろう?    夢を見ていた。  あれはいつの事だろう。忘れてしまうほどずっと前のこと。  思い出そうとすると胸の奥がちりりと痛む。  とろりと深い闇の中。滲むような歌声が響く。  ――ねんねんころりよ、おころりよ  ――ぼうやのおもりは、どこへいった  ――あの山越えて、里へいった  聞こえてくるのは子守歌。  心地よい歌声は深い眠りを誘う。  不意に身体を揺すりあげられ、菜月(なつき)は重たいまぶたを開けた。  目に映るのは白い着物。顔を上げれば黒髪を結い上げた白く細いうなじ。細いおくれ毛がふわりと揺れるその人の顔は――背負われていて見えない。 「――――?」  菜月は赤い撫子を描いた浴衣姿。 (なんで浴衣なんか着てるんだろう?)  なにより小さな菜月が女性に背負われているのか分からない。  ゆったりとした歩みにあわせて聞こえる、からころと陽気な下駄の音。 「……あ!」 (浴衣……下駄……今日は縁日だ)
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