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「あ、ああ……」
相づちを打ちながら、僕は混乱していた。佐竹は新メリーさんの話を聞いた時、気味悪がっていた。だから新メリーさんがでたらめだ、と言ったのは、木村を意識しての強がりだろう。
そうだとしても、新メリーさんは僕の作り話だ。本当にメリーさんから電話が来るはずはない……。
「キャアッ!」と悲鳴が聞こえて振り返ると、木村が自分の体を両腕で抱えるようにして、しゃがみ込んでいた。
「ど、どうしたんだよ……」
「私のせいだ。佐竹君が、新メリーさんの話をしてきて、あんなの嘘っぱちだ、っていうから、『じゃあ、試してみれば!』って言っちゃったの。だからきっと、佐竹君はメリーさんに聞いちゃったんだよ。今どこにいるの? って。私のせいだ……」
「木村……」
お前のせいじゃない、と思った。だが、僕のせいでもない。アレはただの作り話なのだから。
「木村のせいじゃないよ」と僕は木村の腕を取り、立たせようとした。廊下にぺたんとへたりこんでいる木村のふくらはぎが、折りたたまれている。鳥が羽を休めているみたいだ。
木村は今、翼を失っているんだ、とそう思った。
「うん、木村のせいじゃない。佐竹にあの話をしたのは僕なんだ。だから、僕のせいだ」と、沸き起こった庇護欲から僕はやさしく言った。
「え……?」
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