聞いてはいけない

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 案の定、体育教師は「うっ」と返答に詰まった。 「あ、ああ。そうだな。だが、佐竹がうわごとの様にメリーさんごめんなさい、とか言っているんだよ。これ、内緒だぞ。 それで何人かの生徒にメリーさんてなんだ? と聞いたんだが、誰もはっきりしゃべらなくてな。ついイライラして。悪かったな」  運動がさほど得意ではない僕にとって、体育教師はある意味、畏怖の対象だ。その体育教師に頭を下げられて、気分が悪いはずがない。 「あと一人、枠が残っているから、僕ならいいですよ」と気分よく請け合って、新・メリーさんの話を語った。  そして、「居場所を聞いてはいけない。そして四人以上に話してはいけない。僕はもう、木村と佐竹の二人に話してしまいました。先生が三人目なので、他の人には聞かれたくなかったんです」と話をしめくくった。 「あ、ああ……」と体育教師は歯切れ悪くうなずいた。どうしたんだろう? と思っていると、僕の鞄の中でスマートフォンがなった。 「あれ? へんだな。校内では電源を切っているはずなのに。すみません」と僕は鞄に手をつっこんで、スマートフォンをつかみだそうとした。  その手を、体育教師がガシッと握る。 「出るな……」 「え?」 「その電話に出るな、って言ってるんだっ……!」
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