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一人になって家路を急ぐ。話をしていいのは、三人まで。人数制限があるから、すぐには噂は広がらないだろう。
けれど、あの子は知っていて自分は知らない……、となると、人は知りたくなる。だからゆっくりと、しかし確実に、広がるだろう。僕はクスクス笑った。
誰も見ていないと思ったが、「おい。何を一人で笑っているんだよ、気持ち悪いなァ」と後ろから声をかけられた。
隣のクラスの佐竹だ。去年同じクラスだったが、通りすがりにあったところで、声を掛け合うような間柄ではなかったはずだ。怪訝に思って「ああ」と「おお」の間の声を出す。
「今、一緒に帰っていたの、木村香楓だろ? なんでだよ?」
佐竹の足りない言葉を補うと、どうやら「木村香楓と僕のようなモブ(その他大勢)キャラが、なぜ一緒に帰っていたのか?」ということを聞きたいらしい。失礼だな。
「木村は委員会の帰りで、たまたま僕が教室に残っていたから、なんとなく一緒に帰ることになっただけだよ」
「なんだ、そうか。それにしては、楽しそうに話してたな?」
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