聞いてはいけない

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「うーん、それもそうだよな。うっかり口を滑らせたときのために、余裕を持っておきたかったんだけど」 「俺で二人目だろ? まだ余裕はある」 「そうだな。ええと。メリーさんの都市伝説は知っているか?」 「捨てられたフランス人形が電話をかけてきて、『わたし、メリーさん。今、〇〇にいるの』って言う話だろ? 電話がかかってくるたび近づいてきて、最後は『今、あなたの後ろにいるの』って言うんだろ?」 「うん。新しい都市伝説の方は、『私、メリーさん。今……』と言ったきり、黙っちゃうんだ。それで電話の向こうから音が聞こえてくる。 だけど、メリーさんが居場所を言うって思っているから、言わないとなると、どこにいるのか気になって、つい耳をすませちゃうんだよ。  ここで、もしも電話を切ったとしても、同じ音が耳の奥から聞こえるんだ。それならスマホから聞こえてくる方がましだから、電話を切ることが出来ない。  やがて電話は切れる。だけど、また電話がかかってくる。さっきよりも受話器から聞こえる背後から聞こえる物音が、大きく、はっきり聞こえる。電話なんだから、相手との物理的な距離は関係ないはずだけど、まるで本当に近づいて来ているみたいに、音が大きくなっていくんだ」
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