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話していいのは三人以下、という縛りがあるにもかかわらず、噂のめぐりは早かった。最初に話したのが木村と佐竹という、男女の人気者だったせいだろう。
「なあ、この話、知ってるか?」という台詞と共に、新しいメリーさんの都市伝説が、ぐるりと回って僕の元に戻ってくるのに、三週間とかからなかった。
ある日、トイレで手を洗っていたら、同じクラスの男子に話しかけられた。
「何の話だ?」と僕は空とぼけて言った。
伝言ゲームがどこまで正確に伝わるのか知りたかったし、新メリーさんの話を初めて聞いたようなフリをしておけば、僕が新メリーさんの発信源だということもカモフラージュできる、と思ったからだ。
ところが相手は、僕の知らない情報を話し始めた。僕たちは一緒にトイレを出て、廊下を歩きながら話を続けた。
「三組の佐竹。駅の階段から落ちて、足を複雑骨折して入院したの、聞いただろ? あれな、新メリーさんのタブーを破って、居場所を聞いちゃったらしいんだよ」
「えっ……?」
「佐竹の奴、新メリーさんのことを、『そんなのただの誰かが作った作り話だ、俺に電話がかかってきたら、今、どこにいるの?って聞いてやる』って息巻いてたらしいんだ」
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