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願い事
「リリアノお嬢様、おはようございます」
そう言いながら入ってきたのは、侍女のアリーだ。
「うん、おはよう」
私はベッドから飛び起きると、身支度を手伝ってもらう。
「本日はお嬢様のお誕生日ですね、おめでとうございます」
窓の外──鳥たちが水浴びをしている──を眺めながら、髪を梳かしてもらっていると、アリーが言った。
そう、今日は私の五歳の誕生日だった。
「ありがとう!」
誕生日は特別な日だ。お父様が誕生日は何かひとつお願い事を聞いてくれる。
今年は何にしようかな。
そんなことを考えていると、身支度が整った。今日は可愛らしい水色のリボンで髪を高い位置で二つに結って貰った。
私もある程度自由に動けるようになったので、せっかくなら、将来のためになるようなお願いが良い。
「決めたわ!」
私が大きな声を出すと、アリーは笑った。
「ふふ、今年のお願いですか?」
「うん!」
それは良かった。そういって、アリーはぽん、と私の肩をたたいた。
「今日という特別な日がとても素敵な一日になりますように」
「ありがとう」
アリーに微笑んで、自室を飛び出す。
急いで階段をかけ下りてダイニングに向かうと、もうお父様もお母様も座っていた。
「おはよう、私の可愛い娘」
お父様──最近頭が少し寂しくなってきたことを本人は気にしている──はそういうと、微笑んだ。
「おはよう、そしておめでとう、リリアノ」
そういって立ち上がり、私の頭を撫でたのはお母様。
「うん! ありがとう、お母様、お父様!!」
笑いながらお母様に抱きつくと、お母様もぎゅっと抱き締め返してくれた。
「それで──、そんなに急いで走ってくるなんて、今年のお願いは決めたのかい?」
お父様も立ち上がって私の前にくると、お母様ごと私を抱き締めた。
胸がすごくくすぐったい。でも、幸せだ。
この幸せを失くさないように、今度こそ。
そう決めて私は、お父様にお願いをした。
「お父様、私に、家庭教師をつけて欲しいの!」
そういうと、お父様は意外そうな顔をした。
「家庭教師、かい?」
「うん!」
大きく頷く。今年のお願いはこれにしようと決めたのだ。
「大きなぬいぐるみも、新しいドレスでもいいんだぞ」
「家庭教師が良いの!」
「……まったく、誰の影響をうけたのかな」
お父様は少しだけ考えこんだあと、頷いた。
「わかった、家庭教師を──」
「とってもきびしくて、優秀な人をお願いね!」
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