水色のレターセット

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同窓会で私を待っていたものは、同級生だけではなかった。   「結子(ゆいこ)。お帰りなさい。待ってたわよ」   指定された居酒屋の入り口で仁王立ちしていたのは母だった。相変わらず横幅は広く(いや前より広くなった気がする)、ショートの髪は白髪も交じり(これも増えた気がする)、50を過ぎた女はこうなるのかとため息をつきたくなる。   「母さん、邪魔」 「アンタが見合いを受けるっていうまでどかない」 「ほかの人にも迷惑だから。ほら」   振り返れば、明らかに同級生ではない大学生と思しき女子たちが困惑している。まったく私と関係のない客だ。   「営業妨害だよ」 「見合い」 「邪魔、どいて」 「2度言った」 「母さんだって見合いって2度言った」 「大事なことだから」   ことの顛末はこうだ。私は中学を卒業して上京。20代も後半になったあたりから帰省の度に母は見合いの話を持ち出してきた。幼なじみが結婚しようがテレビの中の芸能人が海外で式を挙げようが、まったくの無反応な娘に業を煮やし、こうして強硬手段に出たのだろう。   ここ数年、実家にも寄り付かなかったし。
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