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明日
――し上げます。大変恐縮ではありますが、この場をお借りして、私たち二人から皆さまにお話ししたいことがございます。長くなりますが、どうぞお聞き下さると幸いです。
早速ですが、皆さまはアセクシャルと言う言葉はご存じですか?
単語だけは知っているという方もいるかもしれません。ですが、内容まではまだまだ認知されていないと私は思っています。
話は戻りまして、アセクシャルと言うのはセクシャリティの一種です。LGBTと聞くと、あーなんて頷かれる方もいるかもしれませんね。実はLGBTにはTの後にも幾つかのアルファベットが存在しており、そこに他のセクシャリティが隠されているんです。そして、その中にアセクシャルと言うものがあります。
同性愛や、両性愛などありますが、アセクシャルというのは日本語では無性愛と訳され、恋愛感情、性的欲求を抱かないセクシャリティのことを言います。個人差はあるようですが、相手の行動にキュンとしたり、キスや体の関係を望んだりしないと言うと分かりやすいでしょうか。
ここまでの話でお察しの方もいらっしゃるでしょう。そうです。私も静も、二人ともそのアセクシャルです。ですので、私たちの間に恋愛感情と言うものはありません。でも、その上で結婚を決めました。
ですが、誤解しないで欲しいんです。恋愛感情こそありませんが、それ以上の信頼と尊敬、それから好意もあります。ただ、表現するならば、それは親友のような相棒のような、家族のような好意です。
誰と共にいるよりも心落ち着ける存在が、私の場合、静だったのです。そして、彼女も同じように言ってくれています。
静がたまたま女性だっただけであって、私は彼女が男性だったとしても、きっと変わらずいたことでしょう。私は、静の内面に良さを見出し、波長のシンクロを感じ、ただ純粋に共にいたいと思いました。だから夫婦になることを決めました。
考えに理解できない方もいらっしゃるでしょう。よく分からないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。それは仕方がないことだ思っています。
母さん、父さん。それから静のご両親や僕や静の友人たち、驚かせてすみません。でも、どうしても正直にお話しした上で、今日という日を結びたかったのです。
私たちは私たちなりの形で共に人生を歩み、今ある幸福の上にたくさんの幸福を重ねていきます。ですので、どうかこの門出を共に祝福して下さると幸いです。そして、これからも私たち二人をどうぞ宜しくお願い致します。
機会を頂き、また長い話に耳を傾けて下さりありがとうございました。
改めまして、本日は私たちの結婚式にお越しいただき、誠にありがとうございました。
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