第3章 賑やかし要因

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「おはよう、由美」 「おはよう……」 「顔色悪いね、まぁ仕方ないか……」 「うん……」 美奈子は私の事情なんて知らないだろうに、同情した目で私を見ている。 何も教えていないのに、全部わかっている顔だった。 「……」 「……」 無言のまま、学校へ向かう。 落ち込む私を見て、気まずそうに美奈子は口を開く。 「先、行ってる。由美も考える時間必要だよね。1ヶ月じゃ全然足りないよね」 「う、うん」 美奈子はなんの話をしているの? 考える時間が必要? 1ヶ月じゃ足りない? 意味がわからない2つの言葉。 教室に入ると、全ての思考が真っ白になり弾けとんだ。 思考にノイズが混ざる。 「……え?」 美奈子の隣の席ーー豊臣光秀の席に花が添えられていた。 「ねぇ!?どういうことなの!?誰、こんな不謹慎なイタズラをしたのっ!?」 「由美、落ち着いて」 叫んでしまい、教室中の視線を集める。 普段ならそんなの恥ずかしい。 けど、今はそんな羞恥心を持ち合わせていない。 近くに居た豊臣君の友達を捕まえる。 「ねぇ!?誰なの!?豊臣君の席に花なんか置いたの!?君、豊臣君の友達でしょ!?」 「誰置いたって、先生に決まってるだろ……」 「は?どうして……?」 「なんだ知らないのか……?光秀の奴、夏休み前日に事故で亡くなったんだよ」 「え……?」 「ちょっと、来なさい」 すぐに美奈子が駆け寄ってズルズルと引きずられる。 どういうこと? 亡くなった? 亡くなったって何? 廊下を歩く集団の中に豊臣君がいない。 どこに行ったの……? 「そもそも知らなかった……?」 「知らない……、毎日ラインしてくれるって……、いっぱい遊び行こうって約束して……」 「そっか、手術してる日に豊臣君亡くなったから。すぐにテレビでも放送しなくなったしね……。知るタイミングが無かったのね……」 私、夢でも見ているのかな……? 「豊臣君、青信号を渡っていたんだって。……でも信号無視してきたトラックに轢かれて……。外傷とかはあんまり無かったみたいなんだけど、頭から激突して脳がーー」 「もうやめて……」 「……ごめん」 あんなに元気だった豊臣君がこの世界にいない。 みんな、何を言っているのかわからない。 校長先生の挨拶でも豊臣君の死亡に触れる。 ねぇ、どうして誰も豊臣君の死を否定してくれないの……? 「豊臣の住所はここだ。お線香をあげてこい……」 担任の先生から住所を渡された。 私だけが、この世界から浮いている気分だった。
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