プロローグ

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 こんな時、SNSは本当に役立たずだと思う。  ふと誰かに何かこぼしたくても、実名登録が基本ルールのフェイマスブックじゃ、いわゆるリア友とも繋がり過ぎていて、滅多なことを投稿できない。  かと言って匿名SNSだと、意味不明で無責任な悪意達のエサにされそうで怖い。  要するに、何があってもなくても、私がこぼせるのはいつだって砂粒みたいに小さなため息だけだ。 「幸せになりなよ」  不意に、かつて愛した人の静かな声が脳内で響いた。  ──大丈夫だよ、(しょう)ちゃん。  大丈夫、だってもうすぐゴールデンウィーク。今年はかなり大型連休だし、ゆっくり休めればきっと元に戻ってくれる。  手のひらの下の小さな細い背中から、すっと力が抜けた。どうやらモモは眠ったらしい。幸せそうな寝顔に、思わず頬が緩んだ。  きっと大丈夫。この家は私達の幸せなお城だから──。  けれど、ここは閉じられていて、どこにも逃げ場がない。欲張りな風船は膨らんでいく。  私の砂粒みたいに小さなため息も、ゆっくりゆっくりと積もり溜まっていく。まるで砂時計のように。  ひょっとしたらこの家も、そんなため息を拾い集めて作った、ただの砂のお城なのかもしれない。  何故かぼんやりとそう思った。
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