3人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
でも、それだけで。
深優が杉山快大のプロポーズを受け入れてくれたのは、快大が社会人三年目、深優は社会人五年目の春のことだった。「アンタと結婚できる女なんてどうせ私ぐらいよ」なんて強がっていたけれど、深優の瞳からは一筋の涙が流れていたのを、快大は知っている。
三年も婚約指輪をそのままで持っていたものだから、ようやく深優に受け入れてもらった時には、まさか指輪が入らなくなっていた。
いまいち格好がつかなくても、深優が結婚してくれるのが嬉しくて、終始喜んでいた快大に深優は言った。
「本当、そういうところよ」と。ため息をつきながらも、深優の唇の端は笑っていた。
最初のコメントを投稿しよう!