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八 「二人の河」~流れの景色~19
館内の光は眩く明るい輝きを放っていた。
館長が二人に目を向けた。
智也と千恵が同時に振り返った。
二人は出逢った頃の笑顔を取り戻していた。
微笑ましい二人の笑顔につられて、館長が優しく笑みを返した。
「いかがでしたか」
館長が言葉少なに温かく訊ねた。
智也と千恵が互いを見つめ合い、感想を述べた。
「何と言っていいのか。ただ、世界で一番いい映画を観させていただきました」
「いつまでも、私たちの心に、永遠に残される映画でした。本当にありがとうございました」
智也と千恵が館長に感謝を伝え、深々と頭を下げた。
館長が礼返しに小さく目礼をした。
館長は二人に伝えるべきことを話し始めた。
「映画鑑賞の醍醐味は、観賞中もさることながら、観賞後にお二人で話し合うという楽しみもございます。本日の映画について、ゆっくりとお食事でもしながら、お二人で語り合うのもいいかと存じます。想い出の未来は、これから幕が開かれます。第三部はご夫婦のこれからの人生ですから、目を開き、心を開き、伝え忘れのないように言葉をちりばめて築いてください。最後に、お二人の未来に幸あれとお祈りさせていただきます。本日はどうもご来場ありがとうございました」
館長が頭を下げると、二人も同時に頭を下げてお礼を言った。
二人は館長の先導で館外へ出た。
空には薄く輝く小さな星がいくつもちりばめられていた。
東京では珍しい数の星が空に浮かんでいた。
二人が並んでもう一度館長にお礼を言った。
館長がにっこり笑って二人に言葉を贈った。
「メリークリスマス」
二人の目が緩んで同じ言葉を返した。
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