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八 「二人の河」~流れの景色~20
館長が寄り添う二人の背中を見つめていると、二十代前半の青年が扉から出て来た。
青年は背が高く、髪型はオールバックで、均整の取れたスポーツマンタイプのような体型をしている。目と耳のあたりが幼い男の子に似ていた。
青年のあとに続いて出てきたのは二人の孫娘である。孫娘は瓜二つのように髪を後ろで束ね黒縁のメガネを掛けていた。
青年が小声で館長に伝言をした。
「おじいちゃん、今日マスコミ関係者が、うちの映画館について取材をしたいと訪ねて来たんだ。『想い出未来館』の噂が広まっているようだね」
「そうか。ではどこかの田舎にでも場所を移すことにするかな」
「それが賢明だね」
「お前はいくつになっても生意気な子じゃな」
孫娘が館長に訊ねた。
「おじいちゃん、あの二人はこれからどうなるの」
「気になるのか」
「ちょっとだけ」
「未来を映し出すことはできないが、あの夫婦は、互いの気持ちを慮るだけではなく、言葉で伝え合うことの大切さを知り、手を取り合って帰ったよ」
「そうなんだ」
「形はどうあれ、二人は夫婦の絆を取り戻し、これから幸せに暮らしていくことじゃろう」
「よかったね」
「じゃあ僕たちは引越しの準備をしてくるから」
「頼むぞ」
館長と三人の孫が扉の中へ姿を消した。
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