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これまでのお話&プロローグ
『宙に舞う』『宙に散る』に続く完結編。
阿刀野レイの宇宙船・クリスタル号の爆発を知らされた後、リュウはすべての感情をなくし、現実から逃避していた。だが、レイの遺言を聞き、宇宙軍士官学校への入校を決める。
1年後。
ルーインの助けもあり、リュウは士官として極東地区へ赴く。情報分析官であるエリスの助けを借り、コスモ・サンダーの襲撃からメタル・ラダー社の宇宙艦を救ったリュウは、ケイジ・ラダーにパーティに招待され、そこで思い出したレイとの出逢いをケイジ・ラダーとルーインに語る。その話を聞いたケイジ・ラダーは、亡くしたと思っていた息子が目の前にいる青年だと気づくのだった。
一方、マリオンに拉致されてコスモ・サンダーに連れ戻されたレイモンド(レイ)は、病に伏す総督の病室に連れて行かれる。死の間際に、レイモンドが二代目総督ゴールドバーグの息子であること、レイモンドに次期総督を譲りたいと言い残す。
しかし、コスモ・サンダーは、総督が病に伏している間に内部分裂を起こしていた。マリオンが総督代理として一つにまとめようと苦労していたが、7つある基地の司令官たちはコスモ・サンダーを分割し、それぞれが実権を手にしたいと考えていたのだ。
喪が明けて、総督の遺言で二代目総督ゴールドバーグの息子であるゴールドバーグ・ジュニアが次期総督候補に挙げられる。どこの馬の骨とも分からない、コスモ・サンダーに所属したこともない若者に総督が務まるのか。司令官たちは反発を強める。
それ以前に。
レイモンドは総督になるつもりなどなかったのだが、マリオンを手に入れるために、できる限りのことをしようと覚悟を決める。
そんななか、極東地区では3司令官が集まり、ゴールドバーグ次期総督就任に反対する話し合いが持たれていた。レイモンドはマリオンを伴い、不穏な空気が漂う極東地区へと向かう。その途中、コスモ・サンダーが民間宇宙船を襲っているという連絡が入る。襲撃を収めたレイモンドは、そこで出張ってきたリュウと再会し、昔には戻れないと話す。
民間宇宙船に襲撃をかけたコスモ・サンダー第四艦隊の幹部を射殺し、戦闘員たちを送り返したレイモンドだが、その行為は第四艦隊司令官を激怒させる。極東地区への招待を受けたレイモンドは、マリオンに諫められ、自分が行くのではなく、マリオンを送り出す。
ところが、実りのない会合が終わり、帰還についたマリオンは、宇宙艦に仕掛けられた爆発物で帰らぬ人に。
宇宙艦の爆発を目の当たりにしたレイモンドは、自分の甘さを悔い、コスモ・サンダーを立て直すために総督就任宣言を行うのだった。
プロローグ
美しい銀の髪、スラリと背高い姿、
鋭い暗灰色の瞳――。
俺は同じ男に、3度、恋をした。
1度目は淡い憧れで、
2度目は恋だと気づかなかった。
3度目にようやく手に入れたのに、
男はあっという間にこの手をすり抜け、
宇宙の藻屑と消えてしまった。
俺が甘かったせいで。
必要なときに冷酷になれなかったせいで…。
死んだなんて今でも信じられない。
知らないうちに、美しい銀の髪を探している。
冷たい灰暗色の瞳を探している。
厳しい叱責でもいいから、
威厳のある声が聞こえてこないかと耳を澄ませている。
だけど…。
どれほど望んでも、姿は見つからない。
声は聞こえない。
本当に逝ってしまったのだ。
俺を置き去りにしたまま。
コスモ・サンダーを託して。
マリオンを亡くしてから、
俺の心は凍てついてしまった。
二度と燃え上がることなどないだろう。
あれがきっと、最初で最後の恋だ。
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