人類ヲ待ツモノ

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 普段人に感謝することの少ない俺だが一日の労働を終え家路につくこの時ばかりは先人たちへの感謝の念が自然と湧き出てくる。自宅にて帰りを待ってくれているものが居るという充足感。これは先人たちの努力なくしては一生味わうことはなかったかもしれないからだ。  玄関の指紋認証センサーに手のひらを当て扉を開くと今日も愛くるしいミーコの姿があった。 「おかえりなさい、ヒロトさん」 「ただいま、ミーコ」 「お食事とお風呂の用意ができてます」 「ありがとう、着替えを済ませたらご飯を頂くことにするね」  手際よく着替えを済ませた俺を待っているのは食卓に並ぶ、白飯、みそ汁、肉じゃがに卵焼き、漬物etc。今日は俺の大好きな和食テイストにしてくれたのだろう。  食材色彩のコントラストが美しく、盛り付けのひとつひとつにも丁寧さがにじみ出ている。では早速いただこう、手を合わせたところで何やら落ち着かないミーコの姿にふと気が付く。 「あぁ、ごめんね、ミーコも今日はご飯がまだだったね」  俺は遠慮がちにはにかむミーコの頭をひと撫でする、そしてうなじ下部にあるコネクタにそっと充電ケーブルを挿入した。  そう、ミーコは人間ではない。ヒューマノイド――人造人間だ。
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