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白い壁に白い天井。目覚めたら、病院らしき部屋のベッドの上にいた。
「琉花、気がついたの?」
「お母さん……」
傍らに母の姿を目にして、ようやく自分が事故にあったのだと悟った。
「大丈夫? 痛みはない?」
左手にぐるぐると巻かれた包帯。そっと触ると頭にも包帯が巻かれている。
「私…… 轢かれた……の?」
駅まで歩いてた途中だった。いつもの様に歩道側を歩いていたら、前から車がすごい勢いでこちらへと向かって来て。
その後はどうなった? まるで覚えていない。
「車が逆走行して電灯を倒して止まって、倒れた電灯が琉花にあたったらしいの」
間に電灯を挟まなかったら、車と直接接触でこの程度の怪我ではすまなかったと母が話す。
「医師を呼んでくるわ」
病室を出て行く母の背を見送ってから、ゆっくりと身体を起こしてみる。なんだか妙に頭が重いのは、怪我のせいだろうか。
そっと部屋を見渡す。洗面台にソファー。個室にいる様だった。
病室の扉がノックされ、開いた扉から宮野千景が顔を出した。
「目が覚めたって聞いて…… 琉花?」
やわらかな微笑みが近付いて来る。千景は私の初恋の人だ。
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