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眠れない。
私が眠れないのは明日がバレンタインで、ずっと気になっていた正宮先輩にチョコレートを渡そうとしているからと言うのもあるけれど、バレンタイン前日に告白されたからだ。
いや、厳密に言うと告白じゃなくて告白予告だ。
「明日、告白するから」
クラスの芦谷くんに急にそんな事を言われて、しかも何故か今じゃなくて明日なんだと思ったら気になって眠れなくなってしまった。
先輩のために手作りしようとしていたバレンタインチョコだけれど、今日の言葉が気になって芦谷くんの分も一応チョコレートを作ってしまった。
芦谷くん…想ってもらってるなんて思わなかったな。明日告白するって本当かな。
「おはよう佐々原さん。今日放課後屋上に来て」
朝、芦谷くんに下駄箱で会ってそう言われた。
昼休み、正宮先輩に会えたって言うのに今日の私には昨日までのテンションとときめきが無くなっていた。
せっかく先輩が一人で歩いていてチョコレートを渡す絶好のチャンスだったのに、ボーッとしていてそのチャンスを見送った。
芦谷くんとの放課後の事が気になってしょうがなかった。
綺麗な茜色の空の下、屋上で芦谷くんが私を待っていた。
「佐々原さん呼び出してごめん。」
「芦谷くん…。」
夕日が眩しくて芦谷くんの表情が見えにくいけれど、緊張していたので丁度良かった。
「佐々原さん今日誰かに告白した?」
芦谷くんの声が急に小さくなった。
「…チョコレート渡そうと思ってたけど渡さなかったって事はあった。それで…」
「佐々原さん好きだよ」
「あ、芦谷くん…。」
「佐々原さん好きな人いそうだったしバレンタインに告白するんじゃないかって思ってさ。焦って告白予告みたいな事しちゃったけど、今日誰にも告白してなくて本当良かった。」
嬉しそうに笑う芦谷くんを見て可愛いなって思って私も笑ってしまった。
「芦谷くん…これ」
「えっ、俺に!?」
昨日作ったチョコレートを鞄から取り出して芦谷くんに渡した。
「昨日の告白予告が気になっちゃって…。バレンタインだしチョコ作っちゃった。」
「よっしゃ!じゃあ俺の事はこれから知ってもらうから」
今年のバレンタインは新たな恋が始まりそうな特別な日になったよ。
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