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いつもより2時間早く起きた朝。
オレは冷蔵庫から昨夜のうちに下ごしらえした材料を出した。
油の入った鍋に火を入れ、温まる間に卵焼きを焼く。続けてウインナーを焼いていると油の温度が上がったお知らせ音がするので、鶏肉を投入していく。
次々揚がっていくからあげと、さっきの卵焼きとウインナーを使い捨てのお弁当箱に詰め、空いたところにほうれん草のごま和えと、ミニトマトを詰める。そしてそのまま、フタをせずにおかずが冷めるまでお弁当は放置。その間におにぎりを握ってこれも冷ます。
手際良くお弁当を作ると、今度は朝食の準備。
カリカリベーコンに目玉焼き二個。その皿にちぎったレタスとトマトを乗せて、食パンをトースターにセットしたところで時計を確認。そろそろ起こすか・・・と思ったらリビングのドアが開いた。
「おはよう」
大きなリュックと普通のリュックをソファの横に置き、すっかり身支度を整えた愛息がこちらに来た。
「おはよう。いま起こそうと思ったのに」
「起きてたよ・・・あとはお弁当と飲み物だけ。これもういい?」
そう言うといい感じに冷めたお弁当にフタをしてランチバッグにしまっていく。
「おにぎりいくついいの?」
「食べられるだけ持って行っていいぞ。右が昆布で左が梅干し」
そう言ってやると、3個ずつあったおにぎりを全部バッグに入れた。
・・・いや、食べるかな?と思ったから作ったけど、本当に6個入れるとは思わなかった。普段から米が大好きで、よく食べるとは思っていたけど・・・。
「おかず足りるか?まだあるぞ」
「ううん。いらない。飲み物は冷蔵庫?」
淡々と準備を進める息子を横目に、オレも朝食の準備を進め、出来上がった皿をテーブルに置いた。それを見てテーブルについた息子は『いただきます』と言って食べ始める。そんな息子に牛乳をおいてやりながら、すっかり大きくなった息子の食べっぷりを見ている。
息子の天翼は今年小学4年で、今日から2泊3日の校外学習に行くのだ。集合が6時半だったので、今日はだいぶ早い朝となった。
もう4年生か・・・。
初めての泊まり。
発情期以外で天翼と離れるのは初めてだ。
ガサツなオレに似ずに天翼は落ち着いていて無口。おまけに年齢の割にしっかりしていて、勉強もよくできる。
身体も大きいし顔も整ってるから、おそらくアルファだろう。
顔は面白いほどオレに似ていない。顔も性格も、どうやら父親に似てしまったらしい。だけど、父親は居ない。オレが一人で生んで育ててるからだ。
ま、オメガの一人親なんて珍しくもない。
そんなことを思っていると、天翼はトーストの最後の欠片を口に入れた。
「足りた?」
「足りた」
ごはんはいっぱい食べるけど、パンは普通だな。
朝はオレの習慣でパンだけど、ごはんにしてやった方がいいかな、と思いながら食器をシンクに入れ、出かける準備をする。
「いいよ、来なくても」
そんなオレを見て天翼は言うけど、こんな初イベント見逃すはずないだろ?
「ちゃんと見送ってやるよ」
笑ってそう言うと、天翼は少し複雑な顔をする。
そろそろ親が煩わしい年頃か?それもさみしいな・・・と、思ったら違ったらしい。
「オレがいなくても大丈夫?夜泣いたりしないでね」
子離れ出来てないオレを心配してくれていたらしい。
「泣くかよ。久しぶりの一人を満喫するよ」
そんなオレの言葉にちょっと疑いの視線を向けながらも、大きいリュックを背負う天翼にもう一つのリュックを持ってやる。天翼は身体が大きいからいいけど、女の子や小さい子は大変だ。
そう思いながら、オレたちは家を出た。
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