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修学旅行
小学生の頃、はじめて修学旅行に行ったときのことだ。
その頃、ぼくの通っていた小学校はとても人数が少なく、旅行に行くにしても、京都や大阪などの定番のところには行かなかった。
ぼくの教わっていた先生は変わった人で、「なにもないところでも、なにかあるものだ」とのことで、とある四国地方のある島へ行った。
そこには、ただ広がる海と、ひとけのない土地だけがあった。
ぼくたちは一様に気を落としながら、三日間お世話になる宿へと向かう。
ふと、ぼくは宿のひとに尋ねた。
「ここの名物や見どころって、なにかあるんですか?」
今思うととても失礼だったと思ってしまうが、そのひとはやさしいひとで、こう答えてくれた。
「あなたの感じ方次第じゃないでしょうか? たぶん、なにもないと思えば、なにも見つからないと思います――わたしはこの島から見える夕陽と、穏やかな海が名物であり、見どころだと思いますね」
***
ぼくはそんなことを思い出しながら、今日の午後の蒸し暑い空を仰いだ。
あの日はもっと濃い青空だったのを、今でも思い出せる。
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