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飲茶店を出て、二人で中華街を歩いた。ユンホォアはすでに、元のチャイナドレス姿に戻っている。まだしも兄貴の格好させといた方が、擬似的に中華街デートした気分になれたかな。彼女が、おれの心を読んだように言った。
「他にも、お望みであればどんな姿にでもなりますよ。あなたの幼なじみ、檜山累くんなどはいかがです?」
「それだけは、ガチで怖いからやめて!ってか、もう望みとかいいよ。どうぞ壺に戻るなり、どっかに旅立つなりして下さい」
「そんな訳には参りません。ワタクシとて桜の精のはしくれ。ご主人の望みを叶えられないなどと、精霊としての沽券に関わりますわ」
「そうかよ…。そ、それじゃあこのおれを」
「はい?」
「マンガ家にしてみろッ!子供のころからなりたかったんだッ!デ○ズニーより売れっ子のやつがいいッ!みじめなヤツはヤだぞッ。『みなとランド』をおっ立てるんだ」
「急に、ポルナレフみたいな事言い出しましたわね!?いいですが、本日の日没と同時に消えてしまいますわよ」
「ああー、そうか。時間限定もあったか。マジで使えねえ。もういいから、壺に帰って…。いや、そうだな。時間限定で、人の心は動かせない。でも、姿は自由に変えられる。だな?」
「はい?」
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