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「みな君と、こうして中華街を歩くなんて…。いつ振りかしら?前はたっ君とお父様、家族四人で歩いたわねえ」
おれの母親、雛子に変身してもらった。本物は精神のバランスを崩して、京都の実家で静養している。どうやら、彼女は変身した人物の記憶を引き継げるようだ。
「あなたのことは、いつも話を聞いています。模試で、また一番だったのですって?また、サッカーの試合でも目覚ましい活躍だったのですって?すごいわ。母として、誇りに思います」
「いやあ、そんな大したこと…ないから」
母と二人で中華街を歩いた。土産物屋を回って、なんて事ない話をして。楽しい時はあっという間だ。すでに、日没はそこまで迫っていた。
「みな君、わたしはあなたに謝らなければならない。わたし、あなたの事が大好きなのに…。本当に非道い言葉をかけてしまった」
「いいよ、いいよ。そんな事は…。ってか、ユンホォアさんももういいよ。すげえ楽しい時間だった」
「どろ〜ん。本当に、これで宜しかったのです?」
「ああ、春の夜の束の間の夢かな。秋だけど。ちょっとの間、いい夢見たよ。兄貴に見せられなかったのは、残念だけど…。いつの日かきっと、な。それじゃああんたも、自由に旅立って…」
言い切らないうちに、彼女がおれに唇を重ねてきた。え、これBL小説じゃ?
「壺から出て、自由な世界に旅立つ…つもりでしたけれど。ワタクシ、あなたが気に入ってしまいました。ご用とあらば、いつでも仰って下さいね。それでは」
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