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11 ブラコン
ロッカーを開けると、A4ぐらいの大きさで、少し厚みのある箱は、デパートの
包装紙で包まれて置いてあった。
持ってみると少し重い。
中が菓子だとしたら、マドレーヌとかの焼き菓子が入っていそうな重さだ。
横に小さく振ってみたが、音はしない。
…が、何かが落ちて、金属音がした。
「え?なに?」
あわてて足元の周囲に視線を走らせると、小さく鈍く光るカギがあった。
どうやら、裏面に貼りつけてあったカギが、道に落ちたようだ。
良かった…。グレーチングの排水溝だったら、カギを失くしていたかも知れない。荷物を出す時には、もっと気をつけないと。
カギを拾い、落書きのあったロッカーのカギと、テディベアを指定された
ロッカーに入れて施錠した。
手元には、菓子折りサイズの荷物と、今施錠したカギがある。
それを取りあえずリュックに入れて、昼食にすることにした。
さっき連絡をしたとき、次の場所は少し離れているので、昼食を済ませて、
13時に再度、連絡して指示を受けるという約束になっていた。
久しぶりに歩いたので、少し足が痛いが、体を動かしているせいか、どこか
スッキリしているように感じていた。
おなかも空いたし、何を食べようかな…と考えた時、パッとさっきのお弁当屋さんを思い出した。
少し戻る事になるが、迷子になる訳にはいかない。それに他に当てがある訳でもないし、何より食欲を刺激された匂いの記憶がよみがえった。
戻りながら、記憶にあるメニューを浮かべ、ランチを何にするか迷っていた。
「いらっしゃいませ。お決まりですか?」
「唐揚げ弁当に、ひじきを付けてください。」
「少しお待ちくださいね。」
そういってお姉さんは、奥に行ってしまった。
どちらも私の大好物だった。
兄が良く作ってくれるメニューで、ちょっと他のメニューとは別格な美味しさだと思っている。
兄はしっかり者で、ちょっと完ぺき主義の負けず嫌い。
家事全般を一手に引き受けてくれてるが、口うるさく私に強要をする事もないし、やらされている的な感じも見せない。何でもサラッとこなしてしまう。
年の差が7歳もあると、考えている事もサッパリわからないが、基本、生真面目で心配性な兄だと思う。まっ心配かけている私が悪いのだけれど…。
私にとって兄は〝出来過ぎる兄〟でもあり、〝父のような存在〟でもある。
言葉にして伝えたことはないが、尊敬している。
何より料理の腕前とルックスは、かなりイケてると思う。
親の欲目ではなく、妹の欲目を差し引いても、イケメンだと思う。
今まで大量のチョコレートを持ち帰って来たり、告られたっぽいようすも時々はあったが、相手の問題なのか、兄の問題なのかはわからないが、あまり長く続いたようすはない。
むしろ最近は、子連れ(私)のシングルファーザーみたいな背中をしている。
20代独身の男性にはない、生活臭が漂っている。
久しぶりに外で食べるランチなのに、兄の味を思い出す私も、かなりのブラコンかも…。
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