12 袋小路⁈の先

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12 袋小路⁈の先

「お待たせしてすみません。唐揚げ弁当ひじき付きのお客様。」 料金を払い、出来立てであったかいお弁当を受け取ると、近くの公園へ向かった。  おなかが空いているのもあるけど、とっても美味しそうな匂いが漂う。 リュックを背負ったまま、ベンチに座り、膝の上でお弁当を開けた。 手前にご飯、その右横の小さいスペースにポテトサラダ、メインの大きいスペースに唐揚げ、ご飯の上の選べるおかずのスペースに私はひじき。 「いただきます。」 どこで食べても必ず、手を合わせる子供のときからの習慣。 アツアツの唐揚げを一口食べると、外はカリカリで中からジュワっと肉汁が出る。  コレコレ!最高。 そのままご飯も一口。ん~美味しい。  このご飯好き!懐かしい味…幼稚園のときに、おにぎりが大好きだった。 おかずがなくても、おにぎりだけで十分だったことを思い出した。  でも、いつからだったか、おにぎりもご飯も、それほど美味しいと思わなくなった。あの頃は言葉で伝えることが出来なかったけど、このご飯美味しい。  そんな事を考えながら、夢中になって食べていたので、バイト中で〝怪しい荷物〟がリュックに入っていることを、すっかり忘れていた…。  おかげで美味しくお弁当が食べられました。  時計を見ると、12時45分だった。 少し時間があるので、近くの自販機でジュースを買って飲みながら、ピンクのコインロッカーまで戻った。  13時。約束の時間に連絡を入れる。 「時間ピッタリ。大丈夫?ちゃんと昼食は食べたぁ?」  安定のゆるさ。語尾を伸ばす感じとゆっくり話すからか、大人と話してる感覚はない。何というかペットに話し掛けてるオジサンのような話し方…。 「大丈夫です。しっかり食べました。指示をもらえますか?」  昼食前に、次の場所は少し離れていると聞いていた通り、今いるピンクのコインロッカーのところをまっすぐ進み、3つ目の信号を右。郵便ポストを過ぎて、少し先を左…と、今までで一番長距離を歩いた。  目印はハッキリしているが、目印までの間が長いので、ちょっと不安になる。 郵便ポストを過ぎて、少し先に交差点があり、そこを左に曲がった。 道はだんだんと細くなり、この先は袋小路なのでは⁈と、不安になりながら歩いて行くと、コインロッカーがあった。  私はリュックから荷物とカギを出し、目的地に着いたと連絡をした。 ここまでくると、手順は慣れたものだった。  最初のうちはビクビク、キョロキョロとして周囲のようすを探っていて、怖いという感覚だった。今もその感覚はあるが、若干マヒして来ている。
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