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14 ライブハウス
さほど大きくない公園には、休日だからか親子連れがいた。それを横目に公園をを曲がり、駅の方へ向かって行くと、右側に不動産屋があった。
入り口のガラスの引き戸には、部屋の間取りが印刷された紙が、内側から貼られていた。
一人暮らしをしたことはないが、ワンルームでも結構な家賃だなぁ…と、ふと足を止めて見入っていた。
私の場合、一人暮らしどころか、自室に引きこもっているのだから、論外だ。
不動産屋を曲がり、道なりに進むと、中高生が集まっていた。
今日一番、近寄りたくない場所かも知れない…。
そこは確認するまでもなく、ライブハウスだろう。
同じような服装をしていたり、推しのグッズを持っていたり、とにかくテンションも熱量も高めの集団だ。
ドアが開いて、中から数人の女子が出て来ると同時に、ライブハウスの音と観客の声があふれてきた。
それだけで熱気あふれる会場が想像できる。私は出来るだけ何気なく、その場を通り過ぎた。
この近くにコインロッカーがあるはずなんだけど…。コインロッカーらしきものは見つからない。ライブハウスの近くと言われただけなので、そう遠くではないはずなのだが…。
一応、次の交差点まで行ってみたが見当たらない。
「見過ごしたかなぁ…。」
独り言を言いながら、キョロキョロと辺りを見回し、同じ道をウロウロしている同年代の女子が、悪目立ちし、彼女たちの注目を浴びた。
何とも居心地の悪い状況になり、一度出直そうかと考え始めた時、外にいた中高生が、次々にライブハウスへと消えて行き出した。どうやら、推しのライブが始まるらしい。
私は、無意識に深く息を吐いていた。
その人だかりが完全に消えるのを、少し遠くから遣り過ごしていると、ライブハウスの入り口の隣に、自販機があって、その脇にこっそり小さなコインロッカーがあった。
「彼女たちがいた時点で、見つからなかったわけか…。」
ちょっとボヤいてみた。
しかし、彼女たちが消え、コインロッカーの全容が見えている今こそ、チャンス!むしろ、今を逃したら近寄ることすら出来ないかも知れない。
一曲でも多く、彼女たちを魅了し続けていて欲しい。と願いながら、コインロッカーに走り寄った。
急いで水色のビニール袋からカギを出し、中を確認しながら連絡した。
正直、いつ彼女たちが出て来るか分からなかったので、同時進行することにした。
コインロッカーには、薄いが大きめの箱があった。
40㎝×50㎝くらいだろうか…。特に気にもしないで、ロッカーから出そうとすると、箱の中でガタッと小さいがハッキリとした音がして、何かが動いたようだった。
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