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2 怪しいチラシ
コンビニの帰り、自宅のポストにチラシが、はさまっているのに気付いた。
家を出るときには、気が付かなかったから、数十分の間に入れられたものだろう。
こんな時間に、人目を避けるようにして、個人宅のポストへ入れるようなチラシといえば、消費者金融。〝即、貸します!〟〝美熟女が男性募集〟とか、高収入を狙おう〝本業より稼げる〟なんてヤツ。
誰が見ても、怪しいチラシと相場が決まっている。
取りあえず、ポストから抜き取り、それを手に家へと入った。
いつものように、サンダルを脱ぎ、炭酸飲料のペットボトルと、スナック菓子を抱えて、二階の部屋まで上がってきてから、
「あっ…。」
リビングに置いてこようと思っていたチラシを、部屋まで持ってきてしまった
ことに気付いたが、どうせ大したチラシじゃないだろうと、スナック菓子と一緒に
近くのテーブルに置き、ベッドに座った。
どんなにのどが渇いていても、なぜか飲みながら帰ってくる気にはなれなくて、いつもベッドに座ってから、ペットボトルを開けるのがルーティンになっている。
「…っ、はぁ~。」
のどの渇きにまかせて飲む。
炭酸の清涼感に小さく声がもれたが、独りの部屋では、そんな声も大きく響いた。
さっきのチラシが目について、再び手に取った。
それは〝金融系〟〝美熟女系〟〝高収入系〟そのどれでもなかった。
分かりやすく〝アルバイト募集〟のチラシだった。…が内容を見れば間違いなく、最初のそれと同じく、怪しいチラシだった。
仕事内容として〝荷物の移動〟と書かれていた。
他には、年齢も資格も、何も書かれていないチラシだった。
そして、一番下に携帯番号が書かれていた。
まさに、怪しいチラシで、怪し過ぎるアルバイト募集だった。
「こんなのやる人いる?」
そんな独り言は、部屋に響いて、すぐに寂しく消えた。
飲み終えたペットボトルを、テーブルに置き、ベッドの上に寝ころがりながら、チラシを手放した。
次の朝、ベッドから降りて、足裏に張りつくチラシをはがし、再び見入った。
何度も手から離れるが、頭の片隅からは離れない。なぜか、この〝怪し過ぎるチラシ〟に、朝からずっと目が奪われる。
「…え~怖いって。」
怪しいと思っていても、気になり、昼頃まで考えていた。
「でも…。」
部屋にいれば考え続けてしまうと思い、リビングでテレビをつけたが、ニュースも情報番組も、全く入って来なかった。
そうこうしているうちに、自然と部屋に戻っていて、何の根拠もないまま、
「アリ…かも。」
そう結論付けた。
単に、考え過ぎたのか、一周回ったのか、そう感じた時には、スマホを手にしていた。
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