20 テディベア

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20 テディベア

 歩き出して少しすると、騒音が聞こえて来た。 交差点で立ち止まり、左右を確認した。 「逆順って、ホント面倒。」 とボヤきながら右へ曲がった。  お弁当屋さんの前は、やっぱりおいしそうな匂いが漂っていたが立ち止まらず、工事現場を左へ行き、大通りに出た。 確かこの大通り沿いに、次のロッカーがあったはず…と歩くと、すぐに分かった。    ゲーセンの外に置かれたガチャに小学生が集まっていた。…が、中から中高生が出て来て、道に広がって話をしている。  私はそっとロッカーへ歩み寄った。 周囲に人が多過ぎる事が気になるが、前回のライブハウスのようにはいかないだろうから、十分に注意しながら、カギを開けた。  中には紙袋に入ったテディベアがいた。以前のテディベアより、ずっと小さくてクリアケースに入っていた。  ドアがパタンと閉まる直前に、カギらしきものが中にある事に気付き、慌ててドアを開け取り出した。  ピンクのロッカーの荷物を見てから、どうしても〝怪しい荷物〟が離れなかったから、同様のものが続くと思っていた私は、少し安心⁈したような、拍子抜けしたような気分だった。  それにしても、前回のテディベアも今回のテディベアも、形や大きさは違うけど、持ち主に愛されていたように感じた。  前回のテディベアは、粗末に扱われて刺繍が色褪せ、所々糸が切れたのではなく、ずっと抱えられたり、側に置かれていて、そうなったように思えた。  目の前のテディベアも、クリアケースに入っているので状態は綺麗だが、年代物のようだし、ケースもテディベアも手入れがされていて、愛されていたように思う。  大切にされ、愛されていたからこそ、2つのテディベアは優しい表情をしていて、温かみを感じた。私にとっては一瞬の出会いとはいえ、次の持ち主へ大切に届けたいと思った。  この人混みの中で、ケースを壊してしまわないように気を付けながら、菓子折りサイズの荷物の上に、カギを乗せてロッカーを施錠した。 「次は駅ビルのデパ地下かぁ…。」 独り言をいい、人とぶつからないように、出来るだけ早く大通りを歩いた。  歩きながら、ふとテディベアの入った紙袋を持って、デパートに入っても大丈夫なのだろうか?と思ったが、心配している間にデパートへ着いてしまった。  私はデパートの制服と帽子が似合うインフォメーションのお姉さんに、ありそうで無理のないシチュエーションを伝え、手荷物として持ち込んでも良いか確認した。
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