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22 モチモチ
二日間のバイトも終わり、達成感なのかスッキリした感覚があり、確実に疲れが残っているはずの足が、軽く感じた。
私は再び、あのお弁当屋さんへと向かっていた。
通りを歩き、工事現場を右へ曲がると、お弁当屋さんが見えてくるはずだったのだが、そこには工事現場で働く作業員の列があり、見通す事は出来なかった。
時間的なものもあるだろうし、単に作業員が多いのも、長蛇の列の原因だろうが、現場に近く、温かくて美味しく、手ごろな値段が、作業員のオジサン達の胃袋を掴んでいるのだと思った。
私も同じような理由で、諸々を鷲掴みにされた客の一人だった。
だから黙って、その列の最後尾に並んだ。
行列の出来る店や、限定商品なんていうものに興味がない私は、基本的に待つのも並ぶのも嫌いだが、前回食べた唐揚げと、ひじきが忘れられなかった。
兄にリクエストすれば、喜んで作ってくれるだろうけど、何かが違っていた。
私は購入したお弁当を手に、近くの公園まで少し歩いて、そこで食べる事にした。温かいお弁当を膝の上で開けて
「いただきます。」
手を合わせて、ひじきとご飯の組み合わせから頬張った。
「おいしいぃ…。」
何でこんなに懐かしいのかなぁ…と不思議に思った。
兄が作ってくれる唐揚げや、ひじきに比べて、数段美味しいというものでもない。どちらも少しずつ味が違うけど、どちらも美味しい。
何でかな…と、おかずを食べてみたが分からなかった。
私は突如として気付いた。おかずじゃない。
「ご飯がモチモチしているからだ!」
我が家のご飯は、どちらかといえばサラッとしていて食べやすいのだが、私はモチモチのご飯が好きだという事に気付いた。
うちのお米の事、帰ったら兄に聞いてみようかな…。
そんな事を考えながら、お弁当を食べ終えた。
「ごちそうさまでした。」
再び手を合わせ、ゴミを袋に詰めてリュックへ入れた。
ポケットの中でスマホが鳴っていた。兄からの着信で、
「今日は久しぶりに、皆で食事をしようって事になったから、急がなくても良いけど、17時頃には帰って来てくれ。」
突然だったが、なかなか皆で会う事が出来ないので嬉しかった。
私はデパ地下に売っている、兄の大好物のプリンを買って帰る事にした。
兄用のプリンを買い、時間があったので他の店も見て歩いた。
可愛いスイーツや季節のフルーツ盛り沢山の綺麗なケーキが並んでいた。
デパートに来ているのだからと、私もご褒美ケーキを買う事にした。
あとマロングラッセがあれば…っと、独り言をいいながら探し、購入した。
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