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24 原因は父
「…母さんが亡くなって、暫くは変わらず、おにぎりを喜んで食べていたのに、
急にご飯を難しい顔して食べるようになったから、オレは母さんが居なくなって、寂しいのかなぁとかさ、心の問題なのかもとか考えたんだけど…何⁈…米なの?」
「…父さんは好きだけどな。サッパリ系の米…。」
嬉しそうに、ご飯を頬張る父を見て
「……何か分かった気がする。母さんが亡くなって暫くは、米びつに米があった。あの頃オレは小学生だったから、最低5㎏の米は重くて、買ったとしても持ち帰れない。だから米びつにあった米がなくなる時に、父さんに頼んで買って来て貰ったんだよ。…父さん、その時に米替えただろ!」
「えぇ!…そうなの?」
兄がたどり着いた原因に、衝撃を受けた。
「だって、子供に米の味っていうか、違いなんか判るとは思わなかったし。父さんは、こっちの方が好きなんだよ。…ダメだったか?」
何てサラッといった。
「オレは、米の品種が変わってるなんて思っても…いや、考えもしなかったから、必死になって原因を探したんだぞ。あんまりご飯を食べなくなっても、幼稚園児の妹には、その理由すら上手く言葉で伝えられなかったから、どうやったら美味しいって食べて貰えるかって、あれこれ工夫してたのに…。」
当時の兄が悩みながら、工夫してくれていた話を聞きながら、もぐもぐと美味しそうに、おかずやご飯を頬張る父を見ながら、兄は盛大な溜息をついた。
「もう少しで今の米が終わるから、そしたら近くのお米屋さんへ行って、モチモチで甘みのある品種を教えて貰おう!もしかしたら、量り売りもあるかも知れない。そしたら少しずつ違う品種を、食べ比べる事も出来るかもな。品種が決まったら、次から配達もしてもらえる…最高だな。」
原因がはっきりし、解決策を話す兄は、生き生きとしていた。
「父さんは、こっち方が好きなんだけどなぁ。」
ご飯茶碗を見つめながら、小さな声でつぶやいたが
「週一程度しか家に帰って来ない、人の好みなんて優先される訳がないでしょ!」
兄にバッサリ切り捨てられた。
こうやって兄は、今まで十年以上も、私を見守り続けてくれていたと知って
「ありがとう。」
自然に素直な気持ちが、口をついて出ていた。
温かい記憶と共に食事は進み、食後には私が買ってきたスイーツを皆で食べた。
この店のプリンが兄は大好きで、父はマロングラッセが大好き。二人共、嬉しそうに食べてくれているので、私もご褒美ケーキを食べながら、自然と顔が緩んだ。
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