4 普通の営業さん

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4 普通の営業さん

 面接当日は、午前中に外出する。 明日、何を着て行こうかな。面接も兼ねてっていってたし…。  バイトの面接って、どんな感じ? あ~、悩む。もしかしたら、そのまま荷物運びもあるかも。  ん~。今更だけど、緊張してきた。  私は都内在住だが、あまり詳しくない。 どちらかというと、方向音痴なので、道が覚えられない。  大抵は、迷子。現在地も分からなくなるくらい。間違いなく方向音痴。 人に聞かないと目的地に着かないことが多い。  スマホがあっても、地図を見ても迷う感じ。 方角も分からないから、スマホや地図をクルクル回しちゃう感じです。  だから、高校も乗り換えとかしないで行けるところで、出来るだけ駅から分かりやすくて近いところにした。  それでも、合格してから不安で、何回もルート確認したくらい。  久しぶりの外出と、方向音痴がある以上、すんなり着かないことを考えて、早めに家を出た。  やっぱり、少し迷った。 でも早めに家を出てたから、待ち合わせの喫茶店には、約束の時間より、少し早く着くことが出来た。  ずっと緊張していたので、のどが渇いて、席に案内されて座りながら、とりあえず、氷抜きの炭酸飲料をオーダーした。  深夜にコンビニに行く以外、出掛けることがなかった私は、昨夜、生地の薄い 長そでを用意した。  秋だけど、陽射しがある昼間は、半そでで十分だった。 むしろ、生地は薄くても長そでというのは、陽射しは当たらないが、暑かった。  暑さと緊張から、運ばれてきた炭酸飲料のグラスに口をつけて、一気に飲み干して、再び、同じものをオーダーした。  二杯目の炭酸飲料が運ばれてきて、少し落ち着きを取り戻したとき、スーツ姿の会社員といった感じの男性が、店に入って来た。  入り口で店内を見渡した男性は、私を見て確信したかのように、テーブルへと 歩いて来た。  平日の昼間の喫茶店に、若い女の子はいない。 きっと電話の声で、若い女の子だと分かったのだろう。  迷うようすは全くなかった。 「こんにちは。…バイトの面接にきた子だよね?」 そういった男性は、電話の声とは少しちがった印象だった。  特にイケメンではないが、の営業さんみたいに見える。 たぶん二十代で、さわやかな感じ。落ち着いた声と話し方は、優しい印象だった。  正直、もう少し怖そうな人が来るかもって思ってた。 外見もだけど、目つきとか、話し方とか普通すぎて、逆に戸惑った。  良く聞かれそうなことを質問されたけど、別に怪しい感じではなく、面接は 終わった。  
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