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5 バイトの心得
「電話してもらった時に、〝いつでも大丈夫〟って言っていたと聞いたんだけど、バイトしてもらう日は、今度の日曜日でも良いかな?」
「日曜…ですか。」
なんとなく平日かと思っていたから、意外だった。
それに、日曜日は学生も多いし、休日だから人も多いのかな…。
私的にはちょっとなぁ…。引きこもり後、初のバイトで、さらに昼間の外出。
誰か知り合いとかに会ったら、気まずい。
「ん?…もしかして都合悪かったかな?」
「いえ、たぶん大丈夫です。」
フッ。たぶんって何?自分で言っておいて笑える。
「それなら、今度の日曜日の午前10時に、新宿駅の北口。取りあえず到着し次第、携帯に連絡くれるかな。携番は知ってるよね?チラシに書いてあったアレね。他に何かあるかな?」
えっ待って、それだけ?
「あの…時間と場所以外は、ザックリっていうか、全く分かんないんですけど、何をしたらいいんですか?」
「そうだなぁ。まぁ時間と場所だけで十分なんだよね。後は、スマホで指示があると思うから、それに従ってもらう感じかな。」
なんか、さわやかな笑顔で流されたっぽいんだけど…。
えっ…、スマホで指示。そういう感じ?
〝荷物の移動〟ってあったけど、荷物は当日に渡されるのかな?
「…わかりました。当日、何か用意するモノっていうか、あった方が良いみたいなのってありますか?」
彼はニコッと笑うと
「歩きやすいスニーカーと、充電MAXのスマホかな。」
はぁ~。考えたくはないが、歩きやすさじゃなくて、もしもの時にダッシュ出来るようにスニーカーとか…。
SOSの為に充電MAXにしておく必要があるとか…。
もう面接もしたし、今更なんだけど、やっちゃったかも。
「あの…このバイトの心得⁈みたいなものってあります?」
「心得ねぇ…。指示されたことを確実に。とか、事故とかトラブルがないように。…かな。」
あ~、悪い方向へ考えると、色んな意味にとれちゃう…。
むしろ、そっちの方が、しっくりきちゃうんだよね。
荷物次第で、指示されたことをスムーズに出来なかったら、どうなる?
もし交通事故や、荷物を壊しちゃったり、失くしちゃったりしたら、どうなるんだろう⁈…もう自分が信じられない。…どうしよう。
こんな感じで、面接と打ち合わせ的なものが終わり、彼は店を出て行った。
自宅へ帰りながら、ホントに大丈夫なのかと不安になったが、面接の彼が、普通に人の好さそうな感じだったので、全く根拠はないが、何とかなるような気がした。
日曜日こそ、何かあってもいいように…いや、あったらマズいんだけど、取りあえず、しっかり準備して行こうと思った。
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