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6 新宿駅北口
日曜日、午前7時。
天気予報をチェックしながら、兄の用意してくれた朝食を食べた。
さらに、動きやすさ重視、それでいて悪目立ちしない服を選んだ。
待ち合わせ場所が、新宿駅だから目的地まで行くのに、迷うことはなさそうだ。
だが、着いてから北口までの人波は、避けて通れそうにない。
スマホの充電を確認して、予備のバッテリーを持って、最低限の必需品だけをリュックに詰めた。
今日の天気予報は、午前中は曇り、午後から雨の確立が40%になっていた。
一応、折りたたみ傘とパーカーも持って行くことにした。
約束の時間に北口へ着いた私は、打ち合わせ通りに、スマホのリダイヤルから、チラシの携番を探しだし、コールした。
数回の呼び出し音の後、前回の声が聞こえてきた。
その声は、確かに落ち着いた男性の声ではあったが、面接の人の声ではなかった。
声だけで断言は出来ないが、面接の人より年上のように感じた。
「おはよう。ん~時間通りだね。体調は大丈夫かなぁ?朝食は食べてきたかなぁ?」
うん。このゆるさ、間違いない。親戚のおじさんと話してるような感じ。
「はい。大丈夫です。朝食も食べました。」
「そっかぁ。ちなみに何食べたの?」
出た!こういう残念な親戚って、どこにでも一人くらい居るよね。
「しっかりした和食でした。」
「和食かぁ…いいなぁ。美味しそう。」
この人戻ってこない感じ⁈ マジヤバイ。
「今日は、よろしくお願いします。指示を出して貰えると、打ち合わせのときに伺ったんですが、まずは何をしたらいいですか?」
「あ~ごめんねぇ。早速だけど、今いる北口にコインロッカーがあるんだけど、場所知ってる?」
「待ってください。使った事ないんで確認します。」
コインロッカーってどこ?
クルクル見回して、それっぽい場所がわかった。周辺の店とかを伝え、場所があってることを確認した。
「場所がわかったところで、一度、面接した喫茶店に行って貰って、マスターから鍵とか預けてあるものを受け取って欲しいんだぁ。受け取ったら連絡してくれる?」
なるほど。そのために新宿駅北口で待ち合わせだったのか。
正直、ゆるいけど優しい話し方だけに、怪しさが増す。
麻薬とか、ハーブとかっていうヤツだったりして…。
ヤバイ…想像するほど、怖さが半端ない。
想像力を捨て、考えるのも止めて、指示だけに集中することにした。
無駄な想像を止め、不安と怖さのループから抜け出した頃、見慣れた喫茶店に着いた。
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